グリーンな栽培体系へ 環境負荷低減と省力化
報告会で産地の取組共有
農水省は「環境にやさしい栽培技術」と「省力化に資する先端技術」を組み合わせた「グリーンな栽培体系」への転換を進めており、予算による支援も行っている。その加速化に向け、14日には、オンラインで関連講演や産地の取組を学べる報告会が開かれた。当日はウェブで約2000人が視聴。注目度の高さが伺われた。今回の報告会は4つのテーマを設け関連講演とテーマに関する取組の報告が行われ、参加者は「グリーンな栽培体系」について理解を深めた。
報告会では始めに佐藤紳生産振興審議官が挨拶。「持続可能な食料システムを構築するため、令和3年にみどりの食料システム戦略を策定。そのなかで農林水産業のCO2ゼロエミッション化など2050年の目指す姿の実現に向け取組を進めているところだ。一方、生産現場では、労働力不足がすすんでおり、環境にやさしい栽培技術を実践するためにはスマート農機など省力化に資する先端技術を組み合わせた新たな栽培体系が必要となる。このため、農水省ではこの新たな栽培体系を現場段階で実証を行いながら、普及拡大を図る取組を推進してきており、これまで258地区で取組が進められている。今回の発表はいずれも高い成果が得られ、全国で普及が期待されるものを厳選しているので、各地域でも今後の営農や営農指導でいち早く応用していただきたい。近年気候変動が激化しており、グリーンな栽培体系への転換は待ったなし。本日の報告会を活用してほしい」と述べた。
その後、農水省農産局技術普及課がグリーンな栽培体系への転換サポート事業の内容について情報提供。事業は、環境にやさしい栽培技術と省力化に資する先端技術を検証して、新たな栽培体系普及に向けたグリーンな栽培マニュアルと産地戦略を策定するもの。具体的な「環境にやさしい栽培技術」として、「化学農薬の使用量低減」「化学肥料の使用量低減」「有機農業の取組面積拡大」「水田からのメタンの排出削減」「バイオ炭の農地施用」「石油由来資源からの転換」「プラスチック被覆肥料の被覆殻対策」「省資源化(耐用年数の長い資材への切り替えなど)」(令和5年度補正予算から追加)が挙げられている。令和5年度補正予算においても27億円計上しているなどと説明した。
その後、①国内資源等を活用した化学肥料の削減②土壌消毒の代替技術③プラスチック被覆肥料の代替技術④J―クレジットに関する技術――の4つのテーマごとに始めに関連講演、次いで取組報告という組み合わせで報告が行われた。
①の化学肥料の削減では、肥料経済研究所の春日健二専務理事が肥料を巡る情勢と国内未利用資源の活用について講演。取組報告では、福井におけるキャベツ、ブロッコリー栽培における化学肥料の削減とドローン防除の実証、茨城県でのドローンによる水稲湛水直播とペレット堆肥を組み合わせたグリーンな栽培体系の実証が報告された。
このほか、関連講演は次の通り。②「有害線虫防除における土壌消毒の代替技術について」(龍谷大学農学部農学科・岩堀英晶教授)③「プラスチック被覆肥料の代替技術」(長谷川技術士事務所・長谷川雅義所長)④「J―クレジット制度概要及び農業分野方法論の紹介」(J―クレジット制度事務局・山口圭太氏)。