新潟クボタ にいがた夢農業2023
変革はすぐそこに 気候変動、スマ農、米輸出
新潟クボタ(吉田至夫社長)は11月15・16日、新潟市産業振興センターで、「にいがた夢農業2023」を開催した。夢農業は、担い手農家に未来の農業経営を考えるヒントにしてもらう趣旨で毎年開催されており、アグリロボシリーズに加え、施設園芸機器や畑作商品も充実。35社が協賛出展した。また気候変動への対応や米輸出について講演も行われ、盛況だった。
『変革はすぐそこに!今、すぐそこ、未来の新潟農業を考える』をテーマに行われた今年の展示会。今年夏、新潟は異常な高温と水不足により1等米比率が大幅に低下した。
冒頭で挨拶した吉田専務は、「今回のテーマにある〝今、すぐそこ〟は、我々が伝えたいメッセージが込められている。1つ目は気候変動への対応。まさに今年、異常な高温と水不足によってコメの品質に大きな影響が出た。気候変動は今、農業経営にも影響を及ぼし、着手しなくてはならない課題だ。今回は、いかに温室効果ガスを減らすか、資源を節約するか、といった内容を充実させた。2つ目はスマート農業の普及。県内にRTK基地局10基を設置完了し、平場ではどこからでも利用できる。KSASに加入すれば、利用料無料という思い切った対策も講じている。ドローンや直進アシストが爆発的に普及して当たり前になったようにスマート農機の普及もすぐそこに来ている。3つ目は農業の国際化。輸出はこれまで以上に重要だ。我々は10年以上前から米の輸出事業に取り組み、今年は過去最高の輸出実績となる見込みだ。数量では約3500t。今後更に増える見通し。今、まさに輸出は有力な選択肢だ」などと述べた。
会場に目を向けると、入口すぐには、クボタがカーボンニュートラルな社会を目指して開発したコンパクト電動トラクタ「LXe―261」が参考出品(国内販売未定)。実演しながら来場者を出迎えた。
中央のスマート農業コーナーでは、業界初の無人ロボットコンバイン「DRH1200A」を筆頭に、トラクタ「MR1000A」、「NW8SA」など、トラクタ・田植機・コンバインの無人自動運転仕様がラインナップされ、関心を呼んだ。またKSASやKSASリモートセンシングのほか、ドローンのT10K、T30Kなどが展示。KSASが来春から連携するBASFのザルビオも新たなトピックスとして紹介された。
また、水稲の中干し期間延長によるJクレジット支援サービスを紹介するコーナーも設置し、同サービスの認知度の向上に努めていた。
また畑作・野菜作コーナーでは、乗用管理機「ナビライダー」や玉ねぎ直播機、稲(乾田直播)麦、大豆の高能率播種・施肥が可能なスリップローラーシーダーをトラクタに取り付けて紹介し、来場者の関心を集めた。
施設園芸コーナーでは、AI灌水施肥ロボット「ゼロアグリ」やネポンのヒートポンプ、また地中熱の園芸ハウスへの導入事例なども紹介。
講演会場では2日間にわたり営農に役立つ講演が行われた。取材した2日目は、新潟食料農業大学学長で、元農林水産事務次官の渡辺好明氏が「食と農、地域社会の岐路、2023年の選択」と題して講演を行った。同氏は、水田を減らさず、コメをしっかり作って世界へ輸出していくことが重要だとした。
クボタの牛腸眞吾技術顧問は、「今年の新潟農業の振り返り」として、今年の品質低下要因を分析。気候変動への対策として、多品目化や稲の出穂期・作期分散、高温耐性品種の導入のほか、土づくりの重要性を説明。耕深15㎝の確保や有機物の施用に加え、登熟期が高温になった場合のケイ酸効果(光合成を促進)などを説明。排水対策も重要だとした。
また、スマート農機と組み合わせた密播、直播、乾直技術を紹介。実証では有人と無人田植機の2台同時作業で鉄コ播種作業を行うと、労働時間が70%削減したと述べた。
【吉田専務談】今年、新潟では米の品質低下で厳しい営農環境となった。そうした中でも設備投資を行い、地域の担い手となる農家さんに最適な提案を行っていきたい。業績面では、第1四半期は、値上げ前の駆け込み需要などで好調だったが、今はその反動がきている。だが、米の輸出事業が業績を押し上げてくれるものと期待している。ドローンは累計約320台を販売し、よく頑張った。高精度な位置補正が可能なRTKの設置も完了したので、スマート農機の普及を進めていきたい。
多くの担い手農家が来場
2日間、様々なテーマで講演が行われた
野菜・畑作機械も提案