教えて! 有機肥料ってなに?
微生物のエサになる
〝水溶性アミノ酸〟再評価
1985年の創業以来100%有機質の肥料の開発を続けてきた大成農材(杉浦朗社長、広島県広島市中区鉄砲町7―8)。同社の石巻工場を訪ね、技術開発室・高田昌和主任と、同社の有機肥料『エキタン有機』『バイオノ有機s』に惚れこみ創業35年、バイオノ有機sの販売実績東北ナンバー1という東北グリーン(宮城県石巻市向陽町2―31―10)の阿部日出男社長に、有機肥料とは何か、また、水溶性アミノ酸肥料とは何か、そのイロハを伝授してもらった。以下その要旨。
――化学(無機質)肥料と有機質肥料の違い。
「化学肥料は土の中に入ると、イオン化し水に溶け込み、毛細根から直接植物に吸収される〝すぐ効く肥料〟。一方、有機質肥料は、微生物に食べられ分解されながら様々な形で植物体に吸収される〝ゆっくり効く肥料〟で、N、P、K、Caなどがイオン化されて毛細根から無機養分として吸収され『無機養分』になる。そのため植物にとって違いがないというのが、一般的な認識だ(異論あり、後述)。また落ち葉や木の枝、藁、籾殻のように分解に時間のかかる有機物は肥料としてはすぐに効かないが、土の中で腐熟(腐植化)し、土をふかふかに柔らかくして団粒構造の土を作ったり、土の中の微生物やミミズやダンゴムシなどの土壌動物を増やしてくれる」
※化学肥料(無機肥料)は、鉱物や空気などから化学的に合成したもの。有機質肥料は生き物の体だったもの(有機物)を原料とした肥料。
――土壌微生物(土壌の生物性)の分析に関心を持った理由。
「有機質肥料の吸収され方を考えた時、化学肥料と同じような使い方をしていてはダメではないのかと気づいた。そこで、行きついたのが微生物活性だった。当時の先端技術、DGCテクノロジーが中央農研の横山和成博士などの研究成果をもとに開発した「土壌微生物多様性・活性値(BIOTREX)」(商標登録登録済み)(本紙7月4日号で詳細既報)を使い土壌の微生物活性値を測定した。土壌消毒後は土壌活性値が下がることも確認。ただ、これだとどんな微生物が活性値を上げているかまでは分からない。病気を引き起こす微生物(糸状菌)でも活性値を上げるからだ」
――進化した測定技術とはどんなものか。
「バクテリア(細菌)とカビ菌(糸状菌)の比率で土壌状態の良し悪しを判断する基準『B/F値』もある。糸状菌が少ないほうが病気になりにくい土(糸状菌が全て悪者ではない。味噌や醤油の原料である麹菌や菌根菌も糸状菌)。その後、分析方法がさらに進化し、土の中のDNAを全て分析するeDNAという分析法も出てきて、土の中の有用菌の割合までも分析できるようになり、肥料メーカーの開発などに活用されている。ただ農業生産者には微生物の種類よりはB/F値のほうが有用だ。カビ菌をいかに増やさせないかが、有機栽培では肝心だからだ。一般に高品質な有機肥料と言われているのはカビ菌が餌にしにくく、細菌が餌にできるものだ。その代表格が完熟たい肥やぼかし肥料で、篤農家は昔から経験則で知っていたのだが、それを科学的に検証する技術が進んだ」
――大成農材のエキタン有機とバイオノ有機sはどんな肥料か?
「エキタン有機は魚肉タンパクの濃縮エキスを酵素分解した有機率100%の液肥。全ての植物栄養素(窒素・リン酸・カリ・アミノ酸・核酸・ビタミン類・ミネラル・生理活性物質など)を含み、植物に活力を与える。土壌へ施用すると糸状菌・放線菌・菌根菌等が増殖し有用微生物の活性が増し、根群の生育が旺盛になる。吸収されたアミノ酸と核酸などが相乗効果を発揮し、棚もちの良い美味しい作物が収穫できる。葉面散布でも潅水施肥でも効果は翌日からすぐに実感できる。ほかにペレット肥料『バイオノ有機s』もある」
――水溶性アミノ酸肥料であることの意味。
「植物にとって重要な肥料の5大要素はN・P・K・Ca・Mgだが、特に体を作るタンパク(N)が重要だ。これは有機物→アンモニア→硝酸に分解され、硝酸の形でしか植物体に吸収されないと言われてきたが、最近では、アンモニア、アミノ酸の形でも吸収でき、タンパク質の最小単位であるアミノ酸の形での吸収がベストではないかということが今のホットな話題となっている。水溶性アミノ酸肥料のメリットは、微生物の餌になり易いこと、しかも低分子なのでカビ菌の餌にはなりにくいこと。また、植物はアミノ酸の形でエネルギーを活用しているが、化学肥料の無機の硝酸窒素から光合成を行い、更にアミノ酸に転換するのはアミノ酸の形で直接植物体に吸収されるよりも効率が悪い。これが、近年の異常高温で、光合成の力が衰え、未消化の窒素やイオンが残っていると、植物体のエネルギーを奪っていく。そのため、棚もちの悪い作物ができてしまう。有機肥料と化学肥料を使った場合では肥料の吸収が明らかに違う。冒頭の異論というのは以上のようなことだ」
※次の機会では、このエキタン有機の特性をフルに生かし、反当り11俵の高品質米を生産するカリスマ農家、千葉伸一さんの経営を紹介する。
〝水溶性アミノ酸〟再評価
1985年の創業以来100%有機質の肥料の開発を続けてきた大成農材(杉浦朗社長、広島県広島市中区鉄砲町7―8)。同社の石巻工場を訪ね、技術開発室・高田昌和主任と、同社の有機肥料『エキタン有機』『バイオノ有機s』に惚れこみ創業35年、バイオノ有機sの販売実績東北ナンバー1という東北グリーン(宮城県石巻市向陽町2―31―10)の阿部日出男社長に、有機肥料とは何か、また、水溶性アミノ酸肥料とは何か、そのイロハを伝授してもらった。以下その要旨。
――化学(無機質)肥料と有機質肥料の違い。
「化学肥料は土の中に入ると、イオン化し水に溶け込み、毛細根から直接植物に吸収される〝すぐ効く肥料〟。一方、有機質肥料は、微生物に食べられ分解されながら様々な形で植物体に吸収される〝ゆっくり効く肥料〟で、N、P、K、Caなどがイオン化されて毛細根から無機養分として吸収され『無機養分』になる。そのため植物にとって違いがないというのが、一般的な認識だ(異論あり、後述)。また落ち葉や木の枝、藁、籾殻のように分解に時間のかかる有機物は肥料としてはすぐに効かないが、土の中で腐熟(腐植化)し、土をふかふかに柔らかくして団粒構造の土を作ったり、土の中の微生物やミミズやダンゴムシなどの土壌動物を増やしてくれる」
※化学肥料(無機肥料)は、鉱物や空気などから化学的に合成したもの。有機質肥料は生き物の体だったもの(有機物)を原料とした肥料。
――土壌微生物(土壌の生物性)の分析に関心を持った理由。
「有機質肥料の吸収され方を考えた時、化学肥料と同じような使い方をしていてはダメではないのかと気づいた。そこで、行きついたのが微生物活性だった。当時の先端技術、DGCテクノロジーが中央農研の横山和成博士などの研究成果をもとに開発した「土壌微生物多様性・活性値(BIOTREX)」(商標登録登録済み)(本紙7月4日号で詳細既報)を使い土壌の微生物活性値を測定した。土壌消毒後は土壌活性値が下がることも確認。ただ、これだとどんな微生物が活性値を上げているかまでは分からない。病気を引き起こす微生物(糸状菌)でも活性値を上げるからだ」
――進化した測定技術とはどんなものか。
「バクテリア(細菌)とカビ菌(糸状菌)の比率で土壌状態の良し悪しを判断する基準『B/F値』もある。糸状菌が少ないほうが病気になりにくい土(糸状菌が全て悪者ではない。味噌や醤油の原料である麹菌や菌根菌も糸状菌)。その後、分析方法がさらに進化し、土の中のDNAを全て分析するeDNAという分析法も出てきて、土の中の有用菌の割合までも分析できるようになり、肥料メーカーの開発などに活用されている。ただ農業生産者には微生物の種類よりはB/F値のほうが有用だ。カビ菌をいかに増やさせないかが、有機栽培では肝心だからだ。一般に高品質な有機肥料と言われているのはカビ菌が餌にしにくく、細菌が餌にできるものだ。その代表格が完熟たい肥やぼかし肥料で、篤農家は昔から経験則で知っていたのだが、それを科学的に検証する技術が進んだ」
――大成農材のエキタン有機とバイオノ有機sはどんな肥料か?
「エキタン有機は魚肉タンパクの濃縮エキスを酵素分解した有機率100%の液肥。全ての植物栄養素(窒素・リン酸・カリ・アミノ酸・核酸・ビタミン類・ミネラル・生理活性物質など)を含み、植物に活力を与える。土壌へ施用すると糸状菌・放線菌・菌根菌等が増殖し有用微生物の活性が増し、根群の生育が旺盛になる。吸収されたアミノ酸と核酸などが相乗効果を発揮し、棚もちの良い美味しい作物が収穫できる。葉面散布でも潅水施肥でも効果は翌日からすぐに実感できる。ほかにペレット肥料『バイオノ有機s』もある」
――水溶性アミノ酸肥料であることの意味。
「植物にとって重要な肥料の5大要素はN・P・K・Ca・Mgだが、特に体を作るタンパク(N)が重要だ。これは有機物→アンモニア→硝酸に分解され、硝酸の形でしか植物体に吸収されないと言われてきたが、最近では、アンモニア、アミノ酸の形でも吸収でき、タンパク質の最小単位であるアミノ酸の形での吸収がベストではないかということが今のホットな話題となっている。水溶性アミノ酸肥料のメリットは、微生物の餌になり易いこと、しかも低分子なのでカビ菌の餌にはなりにくいこと。また、植物はアミノ酸の形でエネルギーを活用しているが、化学肥料の無機の硝酸窒素から光合成を行い、更にアミノ酸に転換するのはアミノ酸の形で直接植物体に吸収されるよりも効率が悪い。これが、近年の異常高温で、光合成の力が衰え、未消化の窒素やイオンが残っていると、植物体のエネルギーを奪っていく。そのため、棚もちの悪い作物ができてしまう。有機肥料と化学肥料を使った場合では肥料の吸収が明らかに違う。冒頭の異論というのは以上のようなことだ」
※次の機会では、このエキタン有機の特性をフルに生かし、反当り11俵の高品質米を生産するカリスマ農家、千葉伸一さんの経営を紹介する。