木材も新需要開拓急げ
木材自給率の上昇と新たな需要創出の重要性
日本の木材自給率は着実に上昇を続けているが、木材需要という視点で見ると、近年は横ばいが続いている。このため、今後の課題として「新たな木材需要を生み出すこと」が極めて重要だ。具体的には、CLT(直交集成板)の活用促進や、木質バイオマスのマテリアル利用に向けた技術開発の推進が求められている。
先ごろ公表された令和5年木材需給表によると、木材自給率は42.9%で、前年から2.2ポイント増加した。これは2年連続の増加であり、約20年前の平成14年に記録した18.8%から2倍以上に伸びたことになる。令和5年の数値は昭和40年代後半と同水準にまで回復している。
木材需要の現状と課題
自給率の上昇は歓迎すべきだが、木材需要全体で見ると、依然として厳しい状況が続いている。平成元年頃には1.1億m³だった需要は、平成21年に6,480万m³まで減少。その後、直近10年間は8,000万m³前後で推移している。特に、用材の需要が減少する一方で、燃料用の需要が伸びているため、全体としては横ばいの状況が続いている。
新たな需要創出の必要性
このような状況を打開し、さらなる木材需要を生み出すためには、新たな需要の創出が欠かせない。以前のコラムでも「米に新たな需要を生み出すべき」と提言したように、木材にも同様の対応が必要だ。安定した需要を確保することで、木材価格の安定化や「儲かる林業」の実現につながる。
CLTと木質バイオマスの活用促進
木材業界では、CLT(直交集成板)を活用した建築物が増加しており、昨年9月の林野庁のデータでは、令和5年度に竣工予定のCLT建築物が1,000件を超える見込みだ。さらに、最新の木材統計によれば、CLTの生産量は前年比20%増の1万8,000m³に達している。集成材に比べれば絶対量は少ないが、確実に増加傾向にある。
加えて、将来的に期待されているのが、改質リグニンや**セルロースナノファイバー(CNF)**といった木質バイオマスのマテリアル利用だ。これらはまだ商業ベースに乗っていないが、商業化に成功すれば、プラスチック代替素材として非常に大きな需要が期待されている。特に、石油製品の代替技術として注目されており、技術開発と社会実装の加速が求められる。
政府のさらなる支援と啓発活動
今後、木材需要を拡大するためには、政府による木材利用の啓発や技術開発支援が不可欠だ。新しい木材利用技術の促進や、木材の多様な活用法について国民への啓蒙活動も一層強化していく必要がある。