【新春インタビュー「激動の時代の舵をどう取るか」三菱マヒンドラ農機CEO取締役社長齋藤 徹氏

タフな会社目指す 人が鍵〝考動〟を期待する
――2023年の状況。
「一言でいうと厳しかった。当社が得意とする市場は国内と北米だが、その両方ともが大きな風邪をひいてしまっている状況だ。国内ではインフレ、猛暑による作柄の不振があり、農機の販売にブレーキがかかっている。一方、北米は22年から金利が上がり始め、小型トラクタのマーケットが急に冷え込み、それが続いている。そうした中だが、国内は、昨年よりもマーケットシェアが上がっている(日農工の数字から)。新規製品の投入は無かったが、既存顧客にアプローチをしっかりとやってきた営業努力が成果につながったと感じている」
――円安のメリット。
「北米向けには確かに円安メリットがあったが、輸入インフレによる原材料費のアップやエネルギー価格の上昇、賃金の上昇で打ち消されてしまった。国内は製品値上げで原材料費のコストアップを吸収しきれていない」
――2024年の展望。
「かなり厳しい状況が続くと思っている。小型トラクタの需要が一定数ある北米では、金利が落ち着いてくれば住宅の着工件数も戻ってきて市況が回復すると見込んでいる。また北米に続く有力な輸出先である韓国には、以前からのパートナー企業、LSの販売網を通じて新型田植機を投入する。日本と同じように稲作があり、大規模農家も多く魅力ある市場だ。ここは大型田植機に需要がある。ヨーロッパにも26馬力トラクタを輸出していく。ポルトガルとベネルクスを皮切りに販路を拡大していく取組みを継続していく。一方で国内は、全体的に回復する兆しが見えてこない。国内の市況は引き続き厳しいと思う。その中だが、先だって発売した小型ディスクハローのクサナギは非常に市場の反応がいい。これを一生懸命売っていく。また、今年は本機でもフルモデルチェンジ発表を予定しており、こうした新商品を足掛かりに売上増とシェアアップを図ってまいりたい」
――マヒンドラ社との協業について。
「マヒンドラ開発の新型トラクタ『OJA』が完成し、まずは21~40馬力までの製品が、インドを中心に順次発売された。日本仕様は当社が手掛けており、24年発売を予定している」
――インド・マヒンドラ社との協業について進捗は。
「マヒンドラの持つ強力なサプライヤーネットワークを活用して、安価な部品の調達ができるのは魅力だ。またマヒンドラのグループ会社であるトルコ・ヒサルラー社の作業機を2019年から輸入し、北海道中心に大好評だ。現在、新たな作業機の開発・生産も検討している」
――社内改革。
「商品力の強化、ペーパーレス、ダイバーシティ、教育研修など様々進めている。一昨年は損益分岐点を約1割低下させた。筋肉質な会社を目指す」
――人材獲得・育成について。
「管理職に女性を登用、また海外人材の採用も積極的に進めており、24年はインド、韓国からも入社する。全国的に人手不足が深刻だが、ダイバーシティを推進して優秀な人材確保に努めたい」
――今後の展望。
「環境変化が厳しい時代だ。環境が変わろうとも逆風にも耐えられるタフな会社にしたい。そのためには、業務改革と人への投資だ。最後は人が全てだと思っている。社員の皆さんにはパーパス・バリューに掲げる〝考動〟を期待している」。