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【新春インタビュー「激動の時代の舵をどう取るか」】JA全農 耕種資材部部長高橋正臣氏

【新春インタビュー「激動の時代の舵をどう取るか」】JA全農 耕種資材部部長高橋正臣氏

次の「中期計画」へ 変革期のなか総合力発揮

 

 ――2023年の概況。


「全農全体の取扱高は、10月末時点で計画比102%、前年比103%で推移している。農産物販売における単価の上昇、取り扱いの拡大が寄与しているが、生産現場においては労働力不足、資材価格の高止まりがある。加えて気候変動、特に高温による農業生産への影響が拡大。また、2024年物流問題もある。JA段階でみると、営農経済事業を、より効率化する改革も求められているところ。このように、農業現場においては、極めて厳しい状況が続いていると認識している」


 ――物流問題の対策は。

「資材部門として、米の物流では、全農統一規格フレキシブルコンテナを全農物流という子会社と一緒に作り、産地から卸まで取り回す取組を拡大している。従来、お米は紙袋で流通するのが主だったが、農業者の規模拡大に伴い、フレキシブルコンテナでの物流、機械荷役に移行しており、流通段階でも手荷役から機械荷役への移行が進んでいる。青果物は段ボールでの物流が主だが、やはり、手荷役からフォークリフトでパレットに載せた形の物流に移行しなければならない。段ボールのサイズも、パレットの標準的な規格に合わせたサイズに変え、パレット物流を促進していく。このように、フレキシブルコンテナや段ボールの規格見直しに取組んでいる」

「一方で、生産資材そのものの物流問題への対応も必要。特に、季節で使用する肥料は配送時期が集中するため、年間を通じた物流の平準化に従来から取組み、予約受注を推進してきたが、その取組を強化している。また、大規模経営体に対する満車直送にも各地でルールを設定して取組んでいる。農薬についても、大規模経営体には大型規格で農薬メーカーから直送する取組も拡大している」

 ――労働力不足対策。

「農地の集約や、労働力の支援体制、要はネットワーク作りの強化は必須になるが、我々資材部隊としては、労力をいかに軽減できるか、労力を軽減できる資材をどう提案できるかといったところに主眼を置いている。例えば、生分解性マルチは環境に優しいということも当然あるが、農業者の声としては、コストは高くとも使用後の剥ぎ取り作業が不要になることが高く評価されている」
「営農担当の耕種総合対策部では、各地方ブロックで労働力支援協議会を設立し、民間会社との連携に加え、農繁期が重ならないボーダークロスも進めている。また自分の暮らしの1割を農業にという〝91(キュウイチ)農業〟も推進している」


 ――高温被害に対する 提案は。

「これだけの高温には、従来の対策だけでは追い付かない。栽培体系や品種など、総合的な見直しが欠かせないが、基本となるのは土づくりだと思う。価格高騰時には土づくりを省きがちだが、年数が経てばその反動がくる。こういう時こそ土づくりを徹底する運動を強化しなければならない」

 ――人への高温対策は。

「農業現場では高齢者が多いので、熱中症などの対策が非常に重要になってきている。手首に装着するセンサーで自身の状態を見守ったり、他の人と連携して何か異常があれば注意し合うといった取組が必要。また、空調服などのアイテムも日常的に活用すべき時代になったと感じている」


 ――環境負荷軽減に関する取組は。


「昨今、各企業においてもESG経営の取組が求められている。取引先である食品会社やレストラン、資材関係の会社など、ステークホルダーの皆様が、ESG経営に大きく舵を切っている中で、私たちも、農業者もそれに対応していかなければならない。温暖化対策では、取組んでいることを整理し目標も立て、その様々な取組を可視化していかなければならないが、全農では、まず、自らのエネルギー消費量調査に着手し始めたところ。また、農業生産段階での取組も大切で、堆肥を使い地域循環させる耕畜連携も拡がっている。またJ―クレジットなどにも積極的に取組み、ブランドを高めていくことにも期待したい。少し時間はかかるが、ESGへの対応はきちんと着実に進めていく」


 ――燃油・資材価格高 騰に対する取組は。


「消費者の皆さんにも国内農業生産へのご理解をいただきながら、安全でおいしい国産農畜産物の適正価格の形成を進めていく。資材については、堆肥のような国内資源を最大限活用しながら、資材をより効率的に使っていくことを促進していく。地元産堆肥を使用した耕畜連携の取組も各地域で進んでいる。ただ、地場で良質な堆肥がないという地域もあるので、肥料メーカーとも連携して、堆肥を原料の一部で使用した肥料の広域流通体制を構築していく。もう1つは、地方自治体で発生する下水汚泥資源から取り出した回収リンを、安全性を確保しながら肥料原料として使う取組を拡充させていく」
「土壌診断に基づく適正施肥は、長年にわたり呼び掛けて取組んでいるが、資材価格高騰の中では、改めて栽培暦における施肥の見直しを進めたり、個々の農家のほ場の土壌診断を行い、土の状態に合わせたオーダーメイドの肥料を提案して使っていただく取組も積極的に進めてきた。一方で、土壌診断に基づく適正施肥を拡大・定着するためには、土壌採取から土壌分析までの作業を簡易にし、スピードを上げていく必要がある。新しい開発技術もしっかり見極めながら、より現場で使いやすい土壌診断の仕組みを再構築していきたい」
「ICT関係では、ザルビオやZ―GISといったものを、可変施肥ができる農機やドローンと連携させる。それによって効果的な肥料散布ができる。こういった可視化しながら合理的に実施する技術には、農業者の関心が非常に高くなっていると感じている。これを、農業者個々の取組から面的な取組にできる仕組み作りも推進していく必要がある。また、我々の責務として、農業経営全体を見回して、必要資材を〝ムダのない効率的な方法〟で農業者に提案していく必要がある、これからは益々そうなっていくと考えている」


 ――2024年の抱負。


「様々な課題が山積しているなかで、農業者の皆さんが現場でどのように解決し、感じているのかなど、自らに問いかけながら、農業者が元気が出るような施策づくりと実践を心掛けていきたい。2024年は全農においては、次の中期計画を策定していく年になる。課題は多いが、何を目標に、何を優先的に取組むべきか、今次中期計画の実践状況と足元の環境変化を考慮しながら、しっかり考えたい。時代の大きな変革期にある中で、JAグループの総合力をいかに発揮できるか、また、DXを駆使した新しい価値創造をどう生み出すか等、構想を立て、議論を交わし、具体的な施策や行動計画を練り上げたい」

 ※本インタビューは昨年12月に行ったものです。

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