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湛水直播を省力化 無コ代掻き同時播種機で 

石井製作所=石井智久社長、山形県酒田市京田=は、農研機構東北農業研究センター、山形県農業総合研究センター、山形大学などと共同で、稲作の低コストと収益向上の同時実現に向け、代掻きと同時に直播が可能な『無コーティング代掻き同時播種機』の普及に力を入れている。トラクタに装着してドライブハローに取り付けできる直播機のため田植機が入れないほ場でも播種可能だ。

 石井製作所は2016年から共同研究に参画し、その成果は農研機構東北農業研究センターが湛水直播栽培技術の向上と普及拡大を図るために昨年春に開催した「水稲無コーティング湛水直播栽培フォーラム」でも紹介されている。本格発売から東北を中心に導入が進んでおり、近年では関東、信越、北陸での試験導入も進む。石井社長は「稲作の規模拡大を目指す上で直播は考えていかなければならない手法の一つ。地域によって合う、合わないはあるが、敢えて挑戦して省力化を図ることで今後の人手不足問題の解決につなげていきたい」との考えを示した。
 同機の特長は、①代掻きと同時に播種を行う②コーティングが不要のため、ほ場での作業工程が削減、労力および費用不要③トラクタ装着のため、耕盤が柔らかく田植機では沈車して進めないようなほ場でも播種可能の3つがポイント。また、ドライブハローに装着した状態で格納できるためスペースを取らずに保管が可能となる。播種装置は、1ha近く無補給で播種でき、催芽籾(5㎜程度まで)を傷つけずに播種可能なのも大きな利点である。
 無コ代掻き同時播種機での播種方法は、散播か条播を選択し、播種量を車速に合わせて自動的に調整できる。鎮圧ローラーで催芽籾を5㎜程度の深さに埋めることで鳥害を軽減し、手持ちのハローの取り付けが可能だ。代掻きのスピードは毎時1~3㎞で播種でき、反当り15~20分の作業となる。
 農研機構東北農業研究センターの研究成果では、「一般的な田植機型8条点播機に比べ仕上げ代掻き+播種+初期除草剤散布の作業時間は大幅に短縮され、種子が75㎏入るので1.5‌ha無補給で播種でき、ほとんどの水田で補助者が不要になる。さらに、ロボットトラクタと組み合わせると無補給無人の協調作業が可能となる。従来のロボット田植機や播種機は、作業は無人でできても、苗や種子の補給作業者は必要で無人化できなかったが、今回の試作播種機では、田植機本体が不要なので、一般的な田植機型8条点播機に比べて、導入コストが大幅に下げることができる」と、その省力化効果の高さを指摘している。
 実際に導入した人からは、①環境(ジャンボタニシがいない・天候が安定している)によるが慣行の栽培方法よりも収量が上がった②飼料稲ホールクロップのみで試験的に行っていたが今年は飯米でも栽培予定③ハウスの使用も抑えることができ、播種時の培土費や人件費を大幅に削減ができる見通し――などといった声が上がるなど、好評だ。
 東北地方では業務用米の生産量が多く、低コスト生産技術を実証できれば、業務用米の供給量を増加できる。
 湛水直播栽培は、育苗が不要で播種が移植栽培より早く、収穫が移植栽培より遅いので、春と秋の労働ピークが平準化されるため、低コスト化だけでなく、労働力不足・規模拡大への対応技術としても有効といえ、今後の導入・普及が注目される。

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