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「ローカル5G」を活用 NTT東日本遠隔農作業支援の成果発表

「ローカル5G」を活用 NTT東日本遠隔農作業支援の成果発表
NTT東日本は12月20日、「ローカル5Gを活用した遠隔農作業支援」実施状況報告会を報道機関向けに開催した。同社は2020年4月に東京都農林水産振興財団と連携協定を締結し、ローカル5Gと超高解像度カメラ等を活用した遠隔農作業支援の実証を進めている。成果では、遠隔指導により、栽培未経験者でも高収量で美味しいトマト栽培に成功し、また訪問回数の削減等により技術指導の効率化と高品質化も実現。またハウス内でのドローン活用の取組みも紹介した。

 実証には同社とNTTアグリテクノロジー、東京都が参加している。
 会の冒頭、東京都農林総合研究センターの松川敦副所長が「実証試験は、2020年から始めて3年が経過し、栽培しているトマトは3作目になり、非常に良い実績がでている。東京都独自の取り組みは、未来につながると共に、稼げる農業になり得る」と述べた。次にNTTアグリテクノロジーの酒井大雅社長が「このプロジェクトの特徴として、昨今ささやかれている食料安全保障に関する問題点や、遠隔指導することで人の移動を無くし、環境配慮にもつなげられるという、重要な要素を秘めている」と話した。
 その後、調布市にあるNTTe―City Labo内にある農業ハウスを見学した。ハウスでは、350株のトマトを栽培しており、そこで作業を行う新規就農者に対し、超高解像度カメラやスマートグラス、遠隔操作走行型カメラ等の高精細映像を用いて、現場から30㎞離れた立川市にある東京都農林総合研究センターにリアルタイムで送り、その映像を基に職員が指導を行う。また、スマートグラスは、映像だけでなくトマトの生育状況も計測し、その記録を自動で集計・データも指導員に送ってくれるので、従来はメジャーで測り、その数値をメールで送信していた手間がなくなり、生育調査業務が28%も時間短縮されたという。これまでは指導員が週に1度、現場に訪れていたが、これを導入することで、時間をかけて現場に向かうことなく生育状況を精緻に把握しながら的確な指導やアドバイスが行えるようになった。経営企画部の中西課長は「栽培未経験者でも失敗のない安定した栽培を行いつつ、技術指導員の効率化や高品質化を図れるようになる」と話す。
 実際にハウスで作業を行っている服部三平さん(74)は、「実際に体感したが、スマートグラス越しにそこの葉っぱを見て欲しいといった感じで指示を出してくれるので、指導員がまるでそばにいるかのような安心感がある。この仕事は知らなかったことや新しいことを知れるし、毎日色々な変化を見られるので、日々楽しみながら仕事ができている」と語った。
 同社は、定年を迎えた人たちから「セカンドキャリアとして新たに農業に携わりたいがスキルもなくどうすればよいか分からない」といった声があり、このような要望にも応えられればとする。
 また、最先端技術で栽培したトマトは教育の一環として、地域の学校給食に提供しているほか、栽培模様の動画配信や、校外学習の受け入れを行っており、食育推進にも積極的に取り組んでいる。広報室は「子どもたちが最先端技術を見て触れることで、農業の泥臭いイメージを払拭し、憧れのかっこいい産業にすることで、農業と地域がサステナブルになることを目指したい」と語った。
 なお同社と都は、さらなる農業DXに向けてAI・ドローン等を活用した取り組みについても開始する。ドローンに搭載したカメラを活用することで、全体俯瞰映像による生育状況の把握をより効果的・機動的に行いたいとしており、こちらも併せて報道陣に公開された。