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環境保全型農法に貢献 ポット成苗移植システム みのる産業

兵庫県豊岡市は、国の特別天然記念物「コウノトリ」で知られる。一度は絶滅したコウノトリを取り戻そうと生産者、JA、行政が一体となり取り組むのが「コウノトリ育む農法」。同農法の一端を担っているのが、みのる産業(岡山県)の「みのるポット成苗移植システム」だ。根鉢付きの成苗を疎植する独自の技術で、病害虫や雑草に負けない健苗に育てる。

 水を張った初夏の田んぼで、㈲グリーンいずし(豊岡市出石町)社長の狩野誠一さん(70)は田植作業のピークを迎えていた。狩野さんは減農薬・無農薬栽培に取り組んでいる。田植機は、みのる産業の「RXG80D―GS」(8条植)。植え付けているのは葉齢4.5葉以上、草丈約20㎝の立派な成苗だ。狩野さんは「農薬や化学肥料を使用しないが、根量の多い太くて強い苗だから病害虫や悪条件にも耐える。活着がいいから田植えの翌日から新芽が出るよ」と話す。
 「コウノトリ育む農法」を始めたのは2006年頃。コウノトリのエサとなるカエルやドジョウ、ナマズなどが暮らす〝生き物がいっぱいの田んぼ〟を作ろうと、農薬や化学肥料にできるだけ頼らない同農法で栽培すると決めた。膨大な手間と苦労を承知の上で始めたのは、農業に携わる者として「環境に配慮した方法でコウノトリが住みやすい町を作る」考えに心から共感したからだ。
 680反のうち140反が無農薬栽培。栽培を始めるにあたり「みのるポット成苗移植システム」を採用し、苗箱と播種機、田植機をセットでそろえた。「強い農業」を目指し、みのる産業が1972年から開発した技術。有機農法に適しているとして、豊岡でも同農法に無農薬栽培で取り組む生産者を中心に普及が進む。
 「苗箱も田植機も発想が違う」と狩野さん。育苗は、広く使われているマット苗ではなく、小さな穴が1穴ずつ独立し一体化したポット苗専用箱を使用する。専用の播種機で1穴に2~4粒、1箱35~45gの薄播きにし、成苗まで育てる。
 田植えの際は、苗箱から1列分の苗を1株2~3本でポット形状のまま、根切りせず押し出すように植えていく。根の傷みがなく、「よく考えてある」と狩野さんはうなる。条間は33㎝、株間は16~30㎝の間で調節でき、狩野さんは21㎝に設定。株元までしっかりと風や日が当たり、開帳型の太い稲になるという。
 コウノトリ育む農法では、生き物が繁殖しやすいよう田植後約40日間は深水管理を行う。雑草の発根が妨げられるメリットがあるが、これは稲にとっても過酷な環境だ。だが、ポット苗なら耐える。「深水は抑草効果もある。コナギやヒエが生えにくくなった」。無農薬栽培は草との戦いだ。狩野さんは、みのるの乗用型水田除草機(8条タイプ)も愛用している。
 一方、育苗には苦労もある。一般的なマット方式に比べポット苗は育苗期間が長い。成苗となる35日ほどの間には水管理に気を遣い、有機肥料を数回与える必要がある。
 そんな時、狩野さんの頭に思い浮かぶのが「苗半作」の言葉。「苗で収穫は決まる。成苗で育った苗は収穫までずっと健康で、倒伏に強く、大きな穂をつける。着粒数が多く収量も多い」。広大な田を管理していると田植期に時間差が生じるが、「ポット成苗の田は成長が早く、田植が遅れても収穫期には通常田に追いつく。作期が分散できるから作業効率がいいし、これなら大規模化しても対応できる」。手間はかかるが取り組む価値はある。
 有機農法が広がる世界的な潮流を背景に、豊岡の環境保全型の農法は高い関心を集める。市もコウノトリ育む農法のお米のブランド化を進め、輸出にも取り組んでいる。
 この20年でコウノトリは240羽を超えたが、人は減った。高齢化や離農も課題としてのしかかる。それでも豊岡には、コウノトリという守るべきシンボルがある。

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