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【特別寄稿】農業機械革新の歴史を語る -16- =農研機構革新工学センターシニアアドバイザー 鷹尾宏之進=

農業を営む上で欠かすことのできない農業機械。時代ごとに現れる様々な課題を解決し、農家の「頼れるパートナー」としてわが国農業の効率化・農産物の高品質化に貢献してきた。そこで、農業機械の開発・改良を進めてきた農研機構革新工学研究センターの鷹尾宏之進シニアアドバイザーにその歴史を解説頂く。本紙では回を分けこれを紹介する。
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分かり易い選択指標 農機具の評価試験の歴史

 大正から昭和の大戦前後に農林省農事試験場で行われた試験研究成果の一部を各年度の農事試験場事務功程、残されたガラス乾板写真、諸機械の比較審査や懸賞募集等を参考に当時の農機具事情を見てきた。比較審査の対象機種は1921(大正10)年に始まり1943(昭和18)年まで累計13機種、総申込662台のうち入賞304台、懸賞募集の対象機種は1920(大正9)年に始まり1943(昭和18)年まで累計22機種、総申込2035台のうち入賞122台、その他製作者等からの依頼調査・鑑定は1913(大正2)年から1943(昭和18)年まで745件だった。このような数字を見ると、当時の技術では性能的にも不安定な機器が市場に出回り、農家の機械選択を誤らせる可能性が高いことを憂い、評価試験装置の作製や試験方法・評価基準の策定等を含め一連の事業実施に当たって尽力された種芸部農具係の広部達三、正村慎三郎、本田哲致、二瓶貞一の各氏には敬意を表したい。また、優良農機具の普及奨励を図るため1911(明治44)年から全国農具博覧会等が毎年のように開催され、農事試験場から審査格付に立会ったという。博覧会等における金銀銅牌などの表彰と発表が農家にとっては一番分かりやすい選択指標であり、出品した製造業者にとっても改良意欲を大いに刺激される場となったといえる。なお、時代を反映し、1938(昭和13)年に出征した鏑木氏壮行時の写真には前列左から本田、正村、鏑木、二瓶、松田の各氏が後列のスタッフと共に顔を揃えている(写真)。

 農事試験場研究史(昭和56年10月)によると、1945(昭和20)年に農事試験場の西ヶ原本場は疎開し、物品は鴻巣試験地に搬入され、研究の中心は鴻巣及び各支場に移った。種芸部農具係は1926(大正15)年に関連施設完成を待って鴻巣試験地に異動し、1947(昭和22)年種芸部の解散を機に、坂本正夫氏を部長とする八研究室体制の農機具部(後の農業機械化研究所の母体)を組織した。1950(昭和25)年の機構改革で鴻巣試験地は関東東山農業試験場となり、農機具部は鏑木豪夫氏が部長を務める左記の六研究室体制に変わる。第1研究室(鏑木豪夫・兼務、耕耘整地用機具)、第2研究室(手塚右門、栽培作業用機具)、第3研究室(松田良一、収穫機)、第4研究室(渡辺鉄四郎、乾燥機)、第5研究室(狩野秀男、脱穀調製機)、第6研究室(渋川利雄、農機具利用改善)である。1959(昭和34)年に防除関連の活動実績から第7研究室(今井正信、病害虫防除機)が誕生した。しかし、同年に畑作部が新設されたことで、第6研究室を畑作機械化研究室として移管し、第7研究室を第6研究室に呼称変更して、1962(昭和37)年まで六研究室体制は維持された。


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【鷹尾宏之進(たかお・ひろのしん)】


 農学博士。1968年東京教育大学大学院農学研究科修士課程修了農業工学専攻。特殊法人農業機械化研究所入所、主任研究員、研究調整役、1995年農水省食品総合研究所食品工学部長、1997年生研機構基礎技術研究部長、2003年退職。2006年日本食品科学工学会専務理事、2018年農研機構農業技術革新工学研究センターシニアアドバイザーとして現在に至る。学会活動により農業機械学会功績賞、農業施設学会貢献賞を受賞、日本食品科学工学会終身会員。

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