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GROUNDBREAKERS AWARD 起業家的農家を表彰 初の大賞は山本将志郎氏

GROUNDBREAKERS AWARD 起業家的農家を表彰 初の大賞は山本将志郎氏
クボタとNewsPicksが主催する「GROUNDBREAKERS AWARD」の最終審査会が1月16日に開催され、和歌山県で革新的な梅づくりに取り組む、株式会社うめひかり・山本将志郎代表が"大賞"に選ばれた。山本氏は、梅産業の価値向上と持続可能な地域農業の実現に向け挑戦を続けており、その独自性と将来性が高く評価された。当日はクボタの北尾会長も駆けつけ、「本アワードが未来を考え、次の一歩を踏み出すきっかけになれば」と期待を述べた。
 山本氏は大賞に加え、視聴者や会場参加者によるオーディエンス賞も獲得した。また、審査員特別賞には3名が選ばれた。アグロエコロジー取締役(牛部門)の村形虹太朗氏は、太陽光発電を活用した牛飼養の高度化や、環境配慮型畜産モデルの構築に挑む姿勢が評価された。イシハラフーズ株式会社農産部統括の吉川幸一氏は、QRコードを活用し紙を使わない生産管理方法を紹介。加工用農産物の生産・供給体制を刷新し、地域農業所得の向上に貢献する取り組みが注目を集めた。西濃パイロット代表取締役社長の木村楓氏は、中山間地域に根ざした農業経営と地域連携の強化により、新たなビジネスモデルを生み出している点が評価された。
 地域・環境貢献賞には、㈲瑞宝専務の三上智暉氏が選ばれた。三上氏は、130haに及ぶ水稲・大豆の大規模有機栽培の実践を紹介し、地域の農地保全や環境に配慮した営農体系の確立に取り組んできた点が高く評価された。有機農法を地域に広げるとともに、慣行農家と有機農家が共に地域を盛り上げていくことの重要性を訴えたメッセージが印象的だった。
 今年のGROUNDBREAKERS AWARDは、農業を"ビジネス"として捉え、リスクを恐れず挑戦を続ける生産者の姿を広く社会に伝える場となった。各受賞者の取り組みは、持続可能な農業モデルの創出や地域振興に向けた新たなヒントを示すものであり、日本の農業の未来を切り拓く大きな一歩となった。
 本稿では、大賞を受賞したうめひかり・山本代表の取り組みを紹介したい。
 山本氏は、令和元年に和歌山県で創業した梅干しベンチャーとして、梅業界の課題と今後の展望を語った。
 和歌山県は全国の梅生産量の約65パーセントを占める一大産地だが、産地内では梅農家と梅干しメーカーの分業が進み、生産者が自分の育てた梅がどのような商品になるのか把握しにくい状況が生まれている。実家の梅農家を継いだ兄の言葉をきっかけに、梅農家自身がつくる梅干しブランドを立ち上げたことが、うめひかり創業の原点である。
 同社は、梅・塩・紫蘇のみで漬けた酸っぱい梅干しに特化し、甘い梅干しが主流となった市場の中で、あえて失われつつある味を提供してきた。創業から6年で300店舗以上と取引を行い、その多くを自転車での直接営業によって開拓してきた。品質も高く評価され、和歌山県内で最高位の賞を受賞するなど、新進気鋭の梅干しブランドとして成長を遂げている。
 また、梅干し製造過程で廃棄されてきた梅のエキスを調味料として商品化するなど、フードロス削減にも取り組んでいる。さらに、家庭での梅干し作りを動画で発信し、梅を漬ける楽しさや魅力を伝えることで、梅文化の継承にも力を入れている。天候不順で産地が打撃を受けた際には、クラウドファンディングを通じ傷のある梅を高値で買い取るなど、生産者を支える活動も行ってきた。
 一方、加工・販売と農業の両方を手がける中で、農業そのものの収益構造が成り立ちにくいという課題も強く認識した。このままでは自社のみならず産地全体が立ち行かなくなるとの危機感から、農業を劇的に進化させる必要性を感じ、世界7カ国を巡って60人以上の生産者を訪ね、栽培と機械化に大きな可能性を見出した。
 海外の果樹農業では、植栽密度の最適化や機械化によって単収が大幅に向上している事例が一般的であることを学んだ。うめひかりではすでに栽培データをアプリで管理し、和歌山県平均の約2倍の単収を実現しているが、海外事例を分析し、日本の梅栽培に応用することでさらなる単収向上を目指している。
 機械化では、梅農家が長期間かけて手作業で行う選別作業に着目し、梅専用の選別機の開発に取り組んでいる。エンジニアを採用し、大規模なデータ収集を終え、梅の傷を瞬時に判別する技術の確立を進めている。こうした取り組みにより、生産効率の大幅な向上が期待できるという。
 現在、同社は和歌山・三重に加え、茨城でも梅栽培を行い、担い手のいない畑を引き継ぎながら年間170tの梅を生産している。売上は毎年200パーセント成長を続け、直近では約7億円規模に達している。
 山本氏は、「梅干しメーカーではなく梅農家であり続ける理由は、農業を変えられるのは農家自身だからだ。今後も地道かつ大胆に梅業界の改革に取り組んでいく」と語り、講演を締めくくった。
 また、当日はクボタの北尾会長も登壇し、「これらの挑戦は全国の農業経営者にとっても、農業課題の解決に挑むビジネスパーソンにとっても大いに参考になる。本日のグランドブレーカーズアワードが、立場を超えて人と人がつながり、未来を考え、次の一歩を踏み出すきっかけになることを願っている」と述べた。
 なお、AWARDでは、農業の「産業化」をテーマにしたトークセッションも行われ、農林水産省や農業系スタートアップ、法律の専門家が、農業エコシステムの変化や未来の産業化に向けた課題について議論した。
 登壇者は、農林水産省のみどりの食料システム戦略グループ長・近藤謙介氏、食農弁護士の桐谷曜子氏、アグベルの丸山桂佑氏、サグリCEOの坪井俊輔氏の4名。クボタ・若園真理恵氏の進行のもと、土地利用やテクノロジー活用、環境配慮など、農業の産業化に不可欠な社会的課題が話し合われた。

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