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飼料用米超多収へ 飼料用米振興協会が意見交換会を開催

飼料用米超多収へ 飼料用米振興協会が意見交換会を開催

飼料用米の超多収の展望と課題

 日本飼料用米振興協会(海老澤恵子理事長)は、12月5日、東京都中央区の食糧会館及びオンラインで「第8回コメ政策と飼料用米に関する意見交換会2023」を開催、生産者や飼料会社など全国から70人近くが参加した。今回はサブタイトルを「飼料用米の超多収の展望と課題」と設定。どうしたら飼料用米の超多収が実現できるか、積極的な意見交換が行われた。特に、いかに多収品種のタネを確保するかが課題として挙げられていた。

 はじめに海老澤理事長が挨拶に立ち「新型コロナ禍やロシア・ウクライナ戦争、ガザでの戦闘といった世界情勢に加え、異常気象もあり、これまでの状況判断ではどうにもならない時代となっており、食料安全保障への関心がますます高まっている。そうしたなか、我々は超多収性の飼料用米を水田に作付けることで飼料自給率を大幅に向上させることが食料自給率の向上に繋がるとの想いで16年間取り組んできた。飼料用米については、現在飼料用米以外への転換への動きが強まっているが、我々は飼料用米こそが食料安全保障の要であるとの想いを強くしている。いずれにせよ生産コストの削減はあらゆる場面で求められており、多収穫米への期待も高い」などと述べた。


 その後話題提供として㈱山中農産(埼玉県加須市)の山中哲大代表が「多収品種の栽培におけるコスト削減」、農事組合法人長戸北部営農組合(茨城県龍ケ崎市)の木村透理事長が「飼料用米多収品種の取組み」、東京農業大学デザイン農学科社会デザイン農学研究室の加藤浩教授が「飼料米専用品種の特徴と育種の現状」と題しそれぞれ話題提供。加藤教授は、「みなみゆたか」や「北陸193号」「タカナリ」など農研機構が開発した品種を紹介。「農研機構の多収品種はインド型のイネを品種改良に用いており、耐倒伏性の高いものとなっている。ただ、耐倒伏性を高めているため、コンバインの刃が消耗しやすい。農機メーカーにはぜひ刃を強くするなり、改良していただければと考えている」「北陸193号は良い品種ではあるが、課題は休眠性。眠ってしまうため、前年の種ではなく、前々年の種を使うと良い」「タカナリはベンゾビシクロン感受性品種となっており(インド型の品種はいずれも同様)、注意が必要。ただし、翌年主食用米等を植える場合には、漏生イネ対策として、ベンゾビシクロンを含む除草剤を散布すれば、上手く処理できる」などと説明した。

 その後、意見交換。助言者として、㈱木村牧場の木村洋文代表、㈱秋川牧園生産部次長で㈱ゆめファーム取締役農場長の村田洋氏、日本飼料用米振興協会副理事長の加藤好一氏が参加、同理事の信岡誠治氏が司会として、意見交換が行われた。

 

 「お米を守ることは農地を守ること」「食料安全保障面からも政府にはもう少し腰を据えて取り組んでほしい」


 木村代表は、「地域によって作物の生育特性は異なる。アメリカもカナダも自らの特性を活かして生産を行っている。翻って日本をみてみると、やはり米生産が一番適している国だと思う。飼料用米は多少食味は異なるが十分に人が食べられるもの。食料安全保障という面からも政府にはもう少し腰を据えて取り組んでもらいたい」。また、村田氏は、「お米を守ることが農地を守ることに繋がる。政府は畑地化の支援に取り組んでいるが、中山間地では、畑地作物の生産は難しく、取り残されるのではとの懸念が強い。そのためにも、飼料用米、多収穫米が必要だ」と話した。最後に信岡氏が「青森では、県知事さんが大きく旗を振ったことで、一気に一大産地となった。トップの姿勢が重要。上が動かないと下も動けない」などとまとめた。