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農業副産物活用のバイオ炭開発 NEDO事業に採択 農研機構、全農、ヤンマー、片倉 コープ等

農業副産物活用のバイオ炭開発 NEDO事業に採択 農研機構、全農、ヤンマー、片倉 コープ等
農研機構、JA全農、ヤンマーエネルギーシステム(以下YES)、片倉コープアグリ、ぐるなびが取組む「農業副産物を活用した高機能バイオ炭の製造・施用体系の確立」事業が、このほど国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/食料・農林水産業のCO2等削減・吸収技術の開発」に採択された。事業期間は2022年度~2030年度の9年間。

【背景と目的】2050年には世界人口が1.3倍に増加し、今後、大幅な食料の増産が不可避と予想される。食料生産においては、農産物の収量を高めつつ、農地が果たすCO2等の吸収・固定能力を最大限に高めることで環境負荷を引き下げることが、食料の増産及び地球環境保全の両面において喫緊の課題。
 農水省は、2021年5月に食料・農林水産業の生産性向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を策定し、今後、CO2の吸収源対策としてバイオ炭による農地炭素貯留、高層木造建築物の拡大、海藻類によるCO2固定化(ブルーカーボン)等の研究開発及びその社会実装を加速する旨の方針を明らかにしている。
 また、欧米などでは、農地土壌の劣化が進行する中で、土壌の肥沃度や健全性を取り戻し、農地が有する炭素固定能力を高める対策を強化している。さらに、農地炭素貯留を対象としたカーボンクレジット市場の拡大を目指す動きも始まりつつある。
 そこで同事業では、イネもみ殻や果樹剪定枝のような農業副産物を炭化し、土壌病害菌を抑制するなどの効果を示す有用微生物の機能が付与された「高機能バイオ炭」製造技術の開発に着手する。また、開発された高機能バイオ炭による農作物の単収向上効果を検証する実証試験を全国各地で行うことで、農作物の種類や地域の気象・立地条件に応じた栽培技術体系を確立し、新たなバイオ炭農法の全国普及を目指す。さらに、農地に貯留されたCO2量を環境価値に変換する評価手法を開発することにより、生産された農産物の環境価値を消費者に届ける仕組みの構築にも取り組む。
 これらの取り組み・研究開発を通じ、農業者の方々がバイオ炭農法に取り組みやすくするとともに、CO2排出権クレジットの創出や、環境価値の高い農産物の生産を推進する。
【技術開発のポイント】同事業では、バイオ炭農法の普及のボトルネックとなっている、バイオ炭の製造・施用コストを削減するとともに、有用微生物の機能を付与することによる生育促進効果により、農作物の収量向上を目指す。
 また、「温室効果ガス(GHG)削減に貢献する農産物である」といった環境価値を見える化し、当該価値を取引価格に転嫁できるようにすることで、バイオ炭農法の収益性を改善し、農業者および農業関連事業者によるバイオ炭に係る取組みを後押しし、社会実装を目指す。
 農研機構、JA全農、YES、片倉コープアグリ、ぐるなびは、今回の採択について「それぞれの技術と知見を集結させて本事業を推進し、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、農業生産分野のみならずフードチェーン全体の変革を目指す」としている。