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長野県農業経営者協会・中村市郎副会長に聞く

長野県農業経営者協会は昭和46年に設立され、農業の社会的・経済的地位の向上や農業問題の解決に努めること等を綱領に掲げ、農業の活性化と地域づくりのために活動している。令和2年度に50周年を迎えた同協会の会長は、白馬村で水稲と野菜を生産する武田昭彦氏。3年度は県支援センター等との懇談会、研修生受け入れ、信州産農産物PRのための農産物販売などを行った。同協会の副会長で、飯綱町のやまじゅうファームでりんごを栽培する中村市郎氏(69歳)に話を聞いた。

 ――農業経営者協会について。
「平成18年度から、〝知事とのファーマーズ会議〟を開催し、知事とテーマを決めて直接意見交換をしている。今年はコロナ禍の影響で開催できなかったが、県のトップに自分たちの想いを伝えることができる場は良いと思う。その後、県の部長や課長と細かい部分を話し合う2本立て。また、総会の際には講師の方を招き、時代に沿ったテーマの講演会を開催している。県内13支部で研修会も実施。地区の課題に合った講演や情報交換といった内容で、参加者にも好評。このほか、農業高校や農業大学校などからの研修生を受け入れている。今年2月に予定していた創立50周年記念式典は、コロナのため延期になった」
 ――加盟する会員農家 の現状について。
「野菜や果樹、花き、畜産など、経営は多岐にわたっている。コロナ禍で冠婚葬祭や卒業式などが簡略化され、花き農家は落ち込んだ。今は回復しつつあるが、一時期ほどではない。花きだけでは厳しいので、花きと野菜を組み合わせるなど、経営を変えている方も出てきたと聞いている」
 ――長野県農業の現状 と課題。
「令和2年はりんごとぶどうは収穫量全国2位。花きではカーネーション、トルコギキョウ、アルストロメリアは出荷量全国1位。えのきたけとぶなしめじも生産量全国1位となっている。米では献上米を出している方もいて、各部門で活躍している人がいる。ただ、生産者の高齢化が進み、この7~8年は若い人たちが頑張って農地を集積し、規模を拡大。規模拡大は良い部分もあるが、手が回らず、栽培管理が限界にきている。経営耕地面積が大きくなっても、規格外品が増えると収量が上がらなくなる。また、生産資材の高騰でコスト高になり、売上が伸びない。これからの農業経営者には、省力化や機械化の部分、品種構成や販売のことを考える経営力の高さが求められる。そういったことを若い人たちに伝えているが、技術的な面もあり、なかなか思うようにはいかない。次世代の地域づくりを担う人材の育成を、国にも考えてもらいたい」
 ――課題解決に対する 取組やお考え。
「農業経営は多角化してきた。例えば、ぶどう農家とワイナリーが結び付き、レストランでワインと牛肉を提供する。このように、果樹と畜産や、米と野菜などが結び付くと良いのではないか。今年度で〝第3期長野県食と農業農村振興計画〟が終了するので、第4期計画の策定に向け、県農業の現状をもう一度分析してもらいたい。また、私たちも、これからの5年間に向け、県に提案・提言をしていかなければならないと思っている」
 ――中村副会長ご自身 の経営。
「私で11代目。戦前は養蚕・麦・イモなどを作っていたが、終戦後にりんごが広まり、栽培を始めた。私は高校を卒業してすぐに就農。50年近くりんご一筋。徐々に面積を拡大し、ふじを中心に品種を増やしていった。現在は約3・5町歩で15品種。欧米のグラニースミスなど加工向け品種にも力を入れ、加工品も作っている。また、シナノゴールドなど、省力化できる品種を増やしている。肥料は有機質資材を使用し、農薬は県の基準の半分以下に抑え、エコファーマーの認定を受けている。消費者の皆さんのことを考え、納得するものを作るようにしてきたら、この10年で品質や収量が安定した」
 ――果樹作における課 題と解決への取組。
「果樹は機械化が遅れており、収穫は機械化できない。私のところでは、高所作業台車を3台入れており、農薬散布はSS(スピードスプレーヤ)。コンフューザー(交信撹乱剤)の使用や、畑ごとに病害虫の発生状況を見て、必要な農薬を最低量のみ使用。除草剤は一切使用せず、乗用草刈機で草を刈っている。SSが通った跡は土が硬くなるため、フレールモアを導入し、剪定した枝を細かくして土に戻すようにしたところ、ミミズも増えて土が柔らかくなった」
 ――発信したいこと。
「日本農業をどのように支えていくか、食料自給率を上げていくか、国民全体で考えなければ食料安全保障の確立は実現できない。肥料原料のほとんどを輸入に依存している状況では、何かが起こった時、国民の食をどのように守っていくのか。肥料などの生産資材を、国産で調達できるように考えていく必要があると思う」