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スマート技術のみどり戦略貢献 省力、燃油削減の効果など 村上市で新潟県と実証開始 クボタと 新潟クボタ

新潟県とクボタ及び新潟クボタはこのほど連携協定を締結(本紙既報)、協定に盛り込まれた「みどり戦略推進に向けたスマート農業の普及」に関して、新潟県農業総合研究所とクボタ、新潟クボタの共同研究として稲作におけるスマート農業技術を活用したみどり戦略への貢献についての実証がスタートした。4月21日には、メディア向けに実証の様子を公開した。当日はNKファーム村上のほ場で有人機と無人機2台同時作業(耕うん)を実施。省力、燃油削減などの効果を調査した。

 今回の実証は、4月8日に締結された新潟県とクボタ及び新潟クボタとの「『みどりの食料システム戦略』推進及び新潟米の輸出促進に関する連携協定」の内容の一つである「スマート農機の精度向上及び効果的導入に向けた試験研究・実証」として行われるもの。研究課題名は「稲作における最新スマート農業技術を活用した『みどりの食料システム戦略』への貢献実証」で研究期間は令和4~5年度の2年間。現地におけるロボット農機とのスマート農業技術の導入効果を把握することで「みどりの食料システム戦略」(生産性向上と持続性の両立をイノベーションで実現)の推進を目指すことが目的となっている。
 具体的には最先端のスマート農機や営農サービス支援システム(KSAS)を活用した化学肥料や燃費の削減等の効果を調査する。
 実証はNKファーム村上(村上市)のほ場を試験区85a、対照区50aに分け実施。いずれも作付品種は「にじのきらめき」。年間を通じて一連の作業を行い作業ごとに省力や燃油削減などの効果を調べる。今回公開されたのは耕起。試験区は無人トラクタ(MR1000A)で、対照区は有人トラクタ(SL600)でロータリーによる耕うんを行い作業時間や燃費などを計測した。
 ほ場で説明にあたったクボタアグリソリューション推進部技術顧問の渡辺広治氏は「担い手への農地集積が進むなか、一人の農家が収量・品質を落とさずにどれだけの農地面積を抱えられるかが課題。更に地球温暖化や肥料価格の高騰などからどれだけ肥料を削減できるかも大切だ。その両立を目指すのがみどり戦略であり、その推進に向けた大きな武器がスマート農業だ。それを現場で実証し見える化したい」などと話した。
 なお、4月18日には畦塗りを実施。今後については、田植えは有人田植機(NW8S―GS)及び無人田植機(NW8SA)による2台同時作業を行う。中間管理については、水管理はWATARAS、更にリモートセンシング、ドローンによる施肥・防除を実施。収穫についてはロボットコンバイン(食味・収量)とロボットトラクタの2台を同時に動かし収穫と同時に秋耕を行う。収穫されたお米は輸出に向けられる予定だ。
 実証公開にあわせ新潟クボタの吉田至夫社長が記者団の取材に応じた。
 ――今回の実証の意義。
「脱炭素社会に向けてスマート農業がどう貢献できるかということを大きな視点に盛り込んだことが意義があると思う。特に、メタンガスの削減や無人運転による効率化などの効果はオーソライズされた実証成果がないので、それをきちんと明らかにして脱炭素社会に向けて効果があるんだということを示したい。特に新潟県で、稲作でやることで稲作農業における脱炭素化のモデルを構築したい。更には脱炭素社会に向けた持続可能型農業を示すだけでなく農家経営に新しい可能性を開くことができないかと個人的には考えている」
 ――機械の導入コストについてどのようにみているか。
「確かにスマート農業の導入コストは高い。我々は『機械屋』だから、今回の実証では現在導入できる最高スペック、すなわち『フルスペック』で取組むことができる。まずは今回フルスペックでやればどのような効果が得られるのかを示す。それをもとに農家さんがどの技術をどのように導入するか、判断の指標とできるようにしたい。また、スマート農業技術はまだ発展途上。更に進化を続ければ導入コストも下がるだろう」
 ――今回の取り組みと輸出用米との関わり。
「輸出用米の生産には低コスト化が必要だが、スマート農業技術を使えば大面積を少ない人数ででき、十分に低コスト化可能だと思う」
「出口戦略として輸出は重要なものの一つだと考えている。今回の実証でも輸出用としているが、輸出先には今までのところ(シンガポール、香港等)だけでなく、現在クボタとも協議しているが、北米にも力を入れたいと思っている。これまではいわゆる『米文化』のあるところに輸出していた。これからは日本食が定着し、大きな広がりとなっているところにも広げていきたい。その意味で北米を挙げた。アメリカでも米が作られているが、品質面はもちろんのこと、近年は物価の影響もあり、価格競争力も高まっており、十分戦っていけると思う」。