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改質リグニン普及へ 活用推進議連を立ち上げ

4月18日、改質リグニンの普及を後押しする「改質リグニン活用推進議員連盟」が立ち上げられた。会長は衆議院議員の甘利明氏。当日は改質リグニンの開発者である森林総合研究所新素材研究拠点長の山田竜彦氏のほか、実証プラントの運営を行う㈱リグノマテリア代表取締役社長で新・森林資源普及産業会会長の三浦善司氏らが現状などを説明。普及に向けて協力を求めた。改質リグニンは石油由来の高機能プラスチックに代替しうる素材として高い注目を集めている。

 議連の立ち上げにあたり甘利氏は「日本は資源がないが合言葉になっているが、足元にはすごい資源がある。日本古来のスギがその特性を発揮できる改質リグニンだ。生分解性プラスチックの『もと』にもなることから温室効果ガスの削減、カーボンニュートラルに繋がるだけでなく、関連産業の活性化など地方創生や海洋汚染を始めとした各種の汚染の解決と一石何鳥にもなる。これを日本の成功事例としていきたい。社会実装に至るまでのハードルをみんなの力で乗り越えていければ」と挨拶。
 その後山田竜彦氏が改質リグニンについて説明した。リグニンは、植物の細胞壁を構成する主成分の一つで植物の強度を担う役割を担うと考えられている。しかし、取り出す際に変質しやすく植物の種類によりバラツキも大きいため、本格的な工業材料化は困難とされてきた。これに対し改質リグニンは日本の固有種で1種1族のスギを原料にグリコール系の薬液を用いることで加工性能の高い素材に改質したもの、などとした。
 また、三浦善司氏は山田氏の説明を受けたうえで、改質リグニンの課題についてコストを挙げ、「早急に商業ベースの1万t規模の生産プラントの実現を目指したい。将来的にはそうしたプラントを全国20カ所程度作れれば」とした。そのうえで川上にはスギ原料の供給確保のための供給定率補助金、川中の改質リグニン製造事業者には設備建設補助金、また研究所・大学・企業に対しては製品開発応用研究のための研究開発補助金、川下側には改質リグニン安連製品購入促進補助金などの支援を求めた。
 参加した議員からは「セルロースナノファイバー(CNF)との違いは」「生分解の期間は」などの質問が寄せられ山田氏は「CNFとは競合するものではない。リグニンを抽出した後、CNFを抽出できる。ただし、改質リグニンはスギのみ、CNFはほかの樹種でも可能」「分解までの速度はある程度コントロールできる」などと回答、活発な意見交換が行われた。
 閉会の挨拶は、参議院議員で同議員連盟会長代行に就いた武見敬三氏。武見氏は「改質リグニンはこれからは大量生産化に向けた新たな支援が必要な時期を迎えており、公的な資金を活用してどこまでできるかが問われている。例えばワクチンの開発については、研究開発についてのみならず大量生産にかかわる資金を今回初めて経産省が2500億円確保した。こうした新しい国の資金の供与の仕方が多くの方面で出てきている。改質リグニンについても国の支援体制を強化し、実際に大量生産が市場のメカニズムでできるところまで一定のお手伝いをすることができればと考えている」と決意を述べた。
 なお関係者によると、改質リグニンのプラントについては、実証プラントと同様に木質バイオマス発電所に隣接する形での設置がカーボンニュートラルに向けては有効だという。「バイオマス発電で使用する材からリグニンを、加えてセルロースナノファイバーの原料なども抽出したうえで、燃料とし、バイオマス発電で得られた熱や電力を用いてこれらの生成を行えば真の意味で『カーボンマイナス』を実現できる」。

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