農林業機械・農薬・資材についての動向を紹介する

ホンダ（三部敏宏社長）は10月29日、着脱式可搬バッテリー「モバイルパワーパック」の製品説明会を開催し、青山本社ビルの展示コーナーで活用事例を紹介。生産国インドの電動三輪タクシー（リキシャ）をはじめ、今後の広がりが期待される自動配送ロボット（実証実験モデル）、マイクロショベル（試作機）、小型除雪機（コンセプトモデル）などを展示。
　「Ｈｏｎｄａ　Ｍｏｂｉｌｅ　Ｐｏｗｅｒ　Ｐａｃｋ　ｅ：」（以下、ＭＰＰ）は、電動バイクや小型モビリティをはじめ、様々な電動製品に電力を供給する着脱式可搬バッテリー（リチウムイオン電池）であり、そのコンパクトなボディ（高さ２９８㎜×幅１７７・３㎜×奥行１５６・３㎜）に1.3ｋＷｈ以上の大容量電力を貯蔵できる。重量10・３㎏、充電時間は約５時間。現時点では電動二輪車を保有する法人向けのリース販売だが、来年からＭＰＰ搭載機器を開発企業向けに供給を予定している。
　空になったバッテリーを交換すれば、充電時間を待つことなく、連続して走行・稼働することが可能だ。
　同社はカーボンニュートラルの実現を目指して、二輪・四輪製品の電動化やＭＰＰにより電動製品への活用拡大を進めており、ＭＰＰは様々な用途に使用可能なマルチユースバッテリーとしての顔をもつ。
　製品展示コーナーでは、「まちのなか」「おうち」「おしごと」の３つのエリアでその活用事例を展示・紹介した。「まちのなか」では、複数のＭＰＰを同時に充電し、貸出できるバッテリー交換ステーションの量産予定機を展示。駅前やショッピングセンターなど人が集まる場所に設置し、バイクやリキシャなど電動小型モビリティ利用者などへ交換用ＭＰＰを供給することを想定している。
　なお、事業化検討に当たって２０２１年２月から実証実験を行ってきたインドでは、リキシャ向けバッテリーシェアリングサービス事業を２０２２年前半に開始する。リキシャはインド国内で８００万台以上保有され、日常の移動手段として欠かせないが都市部では主にＣＮＧ（圧縮天然ガス）を燃料としており、電動化への重要な課題となっている。
　この他、日本郵便との共用化を進めるビジネス用電動二輪「ＢＥＮＬＹｅ」やビジネス用電動三輪「ジャイロｅ」、屋根付き「ジャイロキャノピーｅ」なども展示・紹介した。
　一方、暮らしの中でもＭＰＰは、パーソナルモビリティや除雪機などの動力源として、また、家の蓄電池としても使えるよう研究を進めている。太陽光発電や風力発電などの余剰電力をＭＰＰに蓄電することで電力の有効活用を図れ、自然条件に左右される再生可能エネルギーを使いやすくなる。さらに、開発中の充電・給電器を使うと「運べる」電力として、キャンプなどのアウトドアや非常時には非常用電源としても利用できる。こうした「おうち」での活用事例として、ＭＰＰを家庭用の蓄電池として使うシステムのコンセプトモデルや新しいパーソナルモビリティコンセプトを紹介した。
　さらに、ＭＰＰを活用した電動建設機械の開発や、自動配送ロボットの走行実証実験等もはじまっている。こうした「おしごと」での活用事例については、バイクなど商用モビリティのほか、ショベル、投光器、農園機器などについても紹介。
　コマツ社製マイクロショベル「ＰＣ01」に同社のＭＰＰと電動パワーユニット（ｅＧＸ）を搭載して電動化した試作車を展示。電動化により、騒音・排熱を大幅に低減できるほか、〝排出ガスゼロ〟を実現することで環境への配慮を抑え、かつ屋内外問わず様々な作業環境で快適に作業可能な一石三鳥を実現する。
　楽天グループとの共同開発による自動配送ロボット（実証実験モデル）は、ＭＰＰを搭載することで充電を待つことなく配送サービスの継続が可能となる。また、ＭＰＰ搭載の小型除雪機（コンセプトモデル）を展示した他、デンソーのトマト自動収穫ロボット「ＦＡＲＯ」やデンヨーのスプリットライト投光機にＭＰＰを搭載して電動化した場合のメリット等をビデオで紹介した。
　同社ライフクリエーション事業本部本部長の加藤稔氏は「ＭＰＰは様々な用途に活用可能なバッテリーであり、今後、除雪機や船外機といったホンダのパワープロダクツ製品にも搭載していきたい」と語った。