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北農工特別講演会 ”儲かる経営”は安全から 革新工学センター志藤博克氏

北農工特別講演会 ”儲かる経営”は安全から 革新工学センター志藤博克氏

 北海道農業機械工業会(宮原薫会長)は5月23日、札幌市内で第67回通常総会、表彰式を開催。その中で農研機構農業技術革新工学研究センターの志藤博克戦略統括監付戦略推進室農業機械連携調査役が「製造者による農作業の安全向上対策~農家マインドを理解した本質的な安全設計を目指して~」の演題で特別講演会を実施した。以下、講演要旨。

  
 農作業死亡事故件数はここ数年減っていると思いきや、農家10万人あたりの死亡事故件数は右肩上がりであり、我が国の産業の中で最も危険と言っていい。ではなぜ事故は減らないのか。労働安全衛生法という法律はできたが、従業員であり経営者の安全確保は自己責任と適用外となっている。その結果として①事故報告義務がない②的を得た対策が困難③農家の自主的な安全への取り組み未確立、といった事態を招いてしまっている。

事故を減らすにはその真相を突き止めることが重要。悪い者探しではなく、なぜ事故が起こったのかを調べ、ヒューマンエラーなどの隠れた原因が何かを突き止めることが大切なことである。

 次に北海道での農業機械による事故事例からいくつかを紹介する。①ポテトハーベスタの事故:ばれいしょ収穫中に拾い上げコンベヤに詰まった草を機械を動かしたまま取ろうとして駆動軸に衣服が巻き付いて首がしまってしまい頚椎捻挫、顔面打撲、首・胸部擦過傷を負った。②ニンジンハーベスタの事故:作業部を動かしながら、茎葉カッタの上に溜まった茎葉やⅤベルトに挟まった夾雑物を取り除こうとして、Ⅴベルトとプーリの間に右親指が巻き込まれ、爪の剥離、通院2~3ヶ月の怪我を負った。

こうした巻き込まれ事故に望まれる対策例としては①作業者が危険部に接近する必要がない改造への改良②駆動時は接近できない/接近する際は動かない構造への改良、などがあげられる。

次に人の転落事故について紹介する。①トラクタからの転落:左側の手すりを掴んで右足を1段目のステップにかけ、左足を2段目のステップにかけながら右手を右側の手すりに伸ばしたが掴みそこね転落。右上腕骨近位骨折で入院3週間、通院10ヶ月。②バーンクリーナからの転落:バーンクリーナのミッション付近に引っかかったワラをフォークで取り除いて降りようとしたところ、つま先がスクレーパの下に入ってつまづき、頭から約4m下のコンクリート堆肥盤に落下。頭蓋骨ヒビ、顎骨折、左手首剥離骨折、慢性硬膜下血腫などで入院1ヶ月。

こうした転落事故の対策としては①適切な位置に把持部を設け、ステップを増設する、などがあげられるだろう。

以上から農機製造者ができることは、まず本質的な安全設計を目指すこと。そのために発想の転換をしなければならず、これからは①“安全”は農家経営の利益になる②安全を軽視した製品は淘汰される③ヒューマンエラーをある程度予測した設計が必要だ。そのヒューマンエラーで最もやっかいなことは「つい、うっかり、まあいいか」。こうしたエラーをなくすには啓発活動と機械改良の両面対策が必要であり、実態に基づくリスクアセスメントが必要となる。

“農家のメンタリティ”とは自分が名づけた言葉だが、ご存知だろうか。農作業事故について「自分では関係ない」「自分は大丈夫」など。農業機械についても「ヘタに安全を求めると使いずらく高い機械になる」など。安全意識については全業界で最低レベルであり、意識の向上を図るには戦略的プランの下で有機的に作用するような仕組みが望ましい。

農業改良普及センターではチェックリストの作成・配布の実施。普及員のサポートの下で家族などと改善案を検討してもらう仕組みを講じている。また、農研機構農業技術革新工学研究センターではサイト内に「農作業安全情報センター」コンテンツとして本日から利用できるようになっている(http://www.naro.affrc.go.jp/org/brain/anzenweb/)。農作業推進事業の全面的な協力を得て、平成23年から聞き取り調査を行ってきた北海道で聞き取り調査をした162事例を収蔵しており、こうした事例を活用する方法も有効と考えている。

以上のことから①人間は失敗する生き物で、「気をつける」は対策ではない②事故も天災と同様に大きな経営リスクである③「安全」と「収益アップ」は両立する――の3点を強調したい。安全は儲かる作業の第一歩。機械を良くするだけでは事故はなくならない。“昨日より今日”、“今日より明日”と日々悩み改善し続けることが必要だ。

 

 

 

 

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